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橋の上で

 投稿者:kaji  投稿日:2005年 2月20日(日)20時26分4秒
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  橋の上で「私の意識」は目を覚ました。視界に広がるのは雨の粒と、輪郭のにじんだ外灯の光。車のヘッドライト。今、「私の身体」はただ歩いていた。雨の冷たさも気にせず、ただ橋を渡りきるために、歩いて。「私の身体」は悲鳴をあげるのを懸命こらえているのに、「私の意識」は気がついた。だから、慰めるために懐かしいピアノの曲を思い出させてやったのだが―― それはとても静かでささやかな音だったので、「私の身体」は気づくことができなかった。そうしてまた、声のない悲鳴をあげ続ける。「私の意識」は優しく「私の身体」を抱きしめた。辛抱強く、長い時間をかけて。橋を渡り終え、雨がやむとやっと、「私の身体」は顔を上げた。大きく息をつき、少しだけ笑い傘をたたむ。「私の意識」は、今日も自分に気づいてくれなかったことにがっかりしながらも、また―― ゆっくりと「私の身体」へと、融けていったのだった。   
 
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